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連日発生する殺人事件。その加害者にも当然、家族がいる。もし、自分の親が殺人犯となったら。その子どもが辿る運命とはーー。これまで2000件以上の加害者家族を支援してきたNPO法人『World Open Heart』理事長・阿部恭子さんが、その現状を伝える。
友達にお別れも言えずに転校
麻子(仮名・30代)は、平凡だが幸せな日々を送っていた。真面目で子煩悩な夫と、わんぱくな息子との3人の生活。麻子も働いており、多忙な日々ではあったが、不自由のない穏やかな日常がずっと続いていくと思っていた。
ある日突然、警察から電話があり、夫に話を聞きたいという。近くで殺人事件が発生し、その地域では、この話題で持ちきりだった。犯人はまだ逮捕されておらず、警察は、近隣住民に聞き込みをしているらしい。殺人事件など自分たちには縁のない出来事で、警察署に向かう夫はすぐ戻ってくるだろうと不審には思わなかった。
ところが、夫の任意の事情聴取は1日では終わらず、連日、朝から晩まで続いたのである。
「大丈夫?」
夫に尋ねると、「心配ない」というが、何らかの形で事件に関与しているのではという疑惑は日々深まっていた。
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