くらし情報『67回目の訪朝へ。寺越友枝さん「国交なき国境を越えて」』

2018年8月26日 11:00

67回目の訪朝へ。寺越友枝さん「国交なき国境を越えて」

聞きたいことは山ほどあった。けど、いつもそばには監視員が付いとるから親子水入らずで話すこともできん。叔父が、『漂流しとったら北朝鮮の船に助けられた』と説明してくれたが、信じられん。何度も、武志に『本当か?』と聞いたけど、『信じてください』と言うばかりや。そのあとの訪朝でも何度も尋ねたが、『お母さん、お墓で話しましょう』と。息子の武志がそう言うんやから、母として信じようと決めたんや」

武志さんは、金英浩(キム・ヨンホ)という名で朝鮮人として暮らし、北朝鮮人の妻をもらい、子どもを3人もうけていた。

友枝さん夫妻の初訪朝は、息子が北朝鮮にわたった経緯も十分に聞けないまま、帰国の日を迎えた。

「空港に見送りに来た武志の顔を見たら、たまらんようになってな。
武志に渡すつもりの20万円のほかに、予備で持ってきた30万円もカバンごと渡してしもた。指輪もネックレスも、着替え用の下着やブラウスも。はいとったストッキングまで空港で脱いで、全部、武志に渡して帰ってきたがよ」

一度会えば、二度、三度会いたい。友枝さんは、掃除のパートで渡航費を稼ぎ、空白の23年を埋めるように訪朝を重ねた。

「武志に再会してからは、どぶの中に手を突っ込んでも金もうけせないかんと思うた。

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