2019年1月9日 16:00
東京五輪・公式映画監督 河瀬直美を支える「家族のつながり」
「可能なときは仕事場にも子どもを連れていき、スタッフにオムツを替えてもらったり、みんなに育ててもらいました。認知症の養母をデイサービスのシーンの出演者にして、現場に連れていくなど工夫をしたりもしました。2歳と92歳を抱えていると、いつ何が起こるかわからない。それでも創作意欲は湧き上がってくる。できる限りの介護サービスと第三者の手を借りながら、創り続けました」
認知症患者と看護師の交流を描いて、カンヌでグランプリを取った『殯の森』(’07年)は、その時期の作品だ。仲間を増やし、仲間とつながることで、子育てと介護に追われながらも、チームワークで、撮影に集中できる環境を作っていった。
つかず離れずの交流があった実母は、このころから疎遠になり、連絡を取り合うこともなくなった。実父は、再会したときすでに新しい家族がいて、’00年ごろ、他界したことだけ知らされていた。
頼れる肉親はどこにもいない状況で、河瀬さんを支えてくれたのは、映画の仲間たちだ。
「だから、河瀬組のスタッフも、自分の会社『組画』のメンバーも、私にとっては家族なんです」
養母は’12年2月10日、97歳で他界。