でも、私が激しく怒鳴ったら諦めるようになりました」
こうして、約10年にわたる父からの性虐待に終止符が打たれた。
しかし、ゆかりさんにとって、ここからが本当の地獄の始まりだった。
「この世から消えてしまいたかった。行為の意味を知らなかったとはいえ、私がもっと早く『やめて』と言えていたら父を止められていたはず。でも私は、自分の居場所ほしさに、父に自分を売ってしまった。だから、<抵抗しなかった私が悪いんだ>、<私はけがらわしい存在だ>と自分を責め続けたんです」
苦しみを抱えきれなくなり、父から受けていた性虐待のことを、母に打ち明ける決心をする。母は父と離婚して私を守ってくれると信じたかった。しかし、母の言葉は、ゆかりさんを再びどん底に突き落とす。
「あなたが誘ったらしいじゃない。お父さんは、あなたがかわいくって、あなたがほかの男性を誘っちゃいけないと思ったって。このことが世間にバレたら、お父さんが会社をクビになって、私たち、ご飯が食べられなくなるから黙っておくのよ」
ゆかりさんの心は、母の言葉によって完全に殺された。中学時代の後半は、父とも母とも口をきかなかった。
「死ぬことばかり考えました。