2019年12月2日 11:00
「夫の発明のおかげ」母との死別の悲哀が妻をガンから救った
それが、このチップの研究を始めて間もなく、肺がんが見つかって。もう、末期やったと思います、入院して半年ほどしか持ちませんでしたから……。抗がん剤を入れると皮膚が荒れ、肌が真っ赤にただれてしまって……かわいそうでしたね。母の死は、やっぱり息子としてこたえました」
それから数年後、今から4年前にプロテオが完成したとき、克之さんは思った。
「僕らは医者と違うので、がんを治すことはできません。でも、少しでも早期に、がんを見つけることはできる。1人でも多くの人に、がんを早くに見つけられてよかった、そう思ってもらいたい」
プロテオの基礎研究から完成まで、10年以上がかかった。その間、研究費を捻出し研究を続けるために、家族一丸となって協力することになったという。
しかし、妻の幸子さんは夫に振り回されたとは微塵も思っていなかった。
「私は、家族は協力するんが当たり前と思っていました。お金に困ったことも『子供たちは得難い経験、さしてもらってるな』って」
そんな父を、子供たちが改めて尊敬し直す日がやってきた。それは、プロテオの完成を発表した直後、15年8月。実用化を前に家族で試験的に検査を実施してみると、なんと幸子さんの検査結果がC判定だったのだ。