2020年3月20日 06:00
佐藤浩市語る父との最後の散歩…晩年にあった親子関係の変化
そういえば、親父があるとき、しみじみ口にしたことがありました」
佐藤さんが役者になると宣言したとき、「親子の縁を切りましょう」と突き放した三國さん。それから数十年後、こんな心情を吐露したそうだ。
「あのとき、お前に、何にもなかったら、どうしようかと思った」
初めて、父の本心に触れた。息子が、箸にも棒にもかからない役者だったらどうにも救いようがなかった、と言ったのだ。それから佐藤さんは、父との最後の別れについて話し始めた。
「13年の早春、映画の仕事でニューヨークに行く直前に都内位で車を運転していて、たまたま親父が入院していた府中の近くを走っていることに気づいて。なぜだか、ふと立ち寄ったんです。桜には早いかと思いながらも『散歩でもするか』と、僕が車いすを押して庭に出たんですが、親父がすぐに『寒い』とか言い出しちゃって病室に戻った。
で、ニューヨークに行って帰ってきたら逝っちゃってたんですよ。ほんの10分ほどでしたが、でもあの散歩があったおかげで、悔いは残らなかった。不思議なものもあるもんだなぁ、助かったなぁと。きっと神様が、最後に親子の別れのシーンを演出してくれたんだろうな」
そう言って、佐藤さんは泣き笑いのような表情をした。
「女性自身」2020年3月24・31日合併号 掲載
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