2020年4月6日 11:00
誕生直後に生存率30%の“余命宣告”…325gの娘が生きた9カ月
続けている。呼吸器の酸素濃度を上げても上げても警告音が鳴りやまない。危篤状態とみた医師は2人に「抱っこしてあげて」と促す。それを聞いて敏哉さんは声を荒らげた。
「そんなことして、容体がもっと悪化したらどないすんねん。なんか、もっとできることあるやろ!」
最後まで医学の力と娘の生命力を信じたかった。翌29日。再びえずき始める奈乃羽ちゃん。
「先生から『かわいそうだからモルヒネを入れてあげてもいい?』と聞かれて。私も、痛みを和らげてあげたいと思い、同意しました」
モルヒネを投与された奈乃羽ちゃんは、少し楽になったようで、眠りについた。ママは小さなおでこを指先で何時間も優しくなで続けた。日付が変わり30日の午前4時前。眠っていた奈乃羽ちゃんの容体が急変してしまう。呼吸状態も脈もどんどん下がっていく。「奈乃羽!」。大声をあげる佑里子さん。
下がり続ける数値。やがて医師が、改めて2人に告げる。
「抱っこしてあげましょう」
まず、佑里子さんが娘を抱いた。ためらっていた敏哉さん。それでも最後、パパは3450グラムにまで成長した娘を、そっと抱きかかえた。その瞬間、奈乃羽ちゃんは静かに旅立っていった。