2020年10月26日 11:00
看護師語る“コロナ看取り”の現場 92人感染の老人保健施設で
「初日にすぐ、お一人看取ることになりました。その方は酸素吸入をしていたんですが、容体が悪くなる一方だったので、急いで点滴の準備をしていたんです。そしたら、みるみるうちに悪くなって……。重症者だけでも入院させてほしい、と職員たちは市にかけ合っていたと聞いています。しかし、なかなか状況は変わりませんでした」
数日の間、なすすべもなく入所者を看取る日が続いた。
「感染のリスクがあるので、ご家族は施設内で看取ることもできません。そのなかで自分なりに精いっぱい業務に当たりましたが、見ず知らずの看護師の私に看取られて亡くなるのかと思うと、入所者さんが気の毒で。“入所者さんたちは見捨てられたんだ……”と心を痛める介護士さんの言葉も聞かれ、悔しさと申し訳なさから、介護士さんと泣きながら看取ったこともあります」
5月16日、札幌市がようやく対策本部を設置。
重症者を病院に搬送できるようになり、施設も徐々に落ち着きを取り戻していった。少しずつスタッフも戻ってきたので、金澤さんは6月下旬にアカシアハイツでの任務を終えた。札幌市は7月3日、アカシアハイツでの集団感染は終息したと宣言。しかし、合計92人の感染者を出し、17人の高齢者が犠牲になるという痛ましい結果となった。