2021年7月5日 11:00
かつて結核の治療に携わり今はコロナと闘う 島で唯一の94歳医師
そんな医院が島にあるだけで、島の人たちは安心できる。自分がやるしかないと思ったんです。島の人に頼まれたわけではありません。地域医療をやってみようという気になった。まぁ、宿命ですよ」
実は、佐藤先生は小学3年生のとき、母親を亡くしている。
「母が亡くなったとき、48歳でした……。腎臓炎は予防が重要です。早く見つけて、適切な治療が必要です。
私が地域医療をするのは、母のことがあったからでしょう」
65歳定年の国立病院の国家公務員という安定した職をなげうって、先生は戸馳島に佐藤医院を開業した。1985(昭和60)年、58歳のときだった。以降、優しく、的確に島の人々の健康に寄り添った佐藤先生。コロナワクチンの接種も、佐藤先生が行っている。「先生は島の宝だ」と島民たちは口をそろえる。
今年は、佐藤夫妻にとって結婚70周年のプラチナ婚に当たる年。夕日が美しい港で、夫婦の写真を撮らせていただいた。
「普通にボヤ~ッと過ごしてきて、いつの間にか2人とも90歳を過ぎました。
あっという間よね」
そう言って、先生を見つめる圭子さんに、先生は深くうなずく。圭子さんの前だと、佐藤先生の口数はさらに少ない。