2021年7月22日 19:48
「一匹も殺したくない」東京の獣医師と、亡くなった台湾の獣医師をつなぐ思い
6月に太田さんについて書いた『犬は愛情を食べて生きている』というノンフィクションを出したんですが、その中で、渡辺宏さんという八戸の保健所で働いていた方を取材しました。彼も殺処分をするのが辛くて、何度も犬の焼却炉に自分も入って一緒に焼いてほしいと思ったといいます。台湾の獣医さんや渡辺さんのような、ギリギリの思いでやらざるを得ない人がいるということは、映画の中で伝えたいなと思いました。それが、中川大志さんが演じる柴崎涼介に反映されています。
林遣都さん演じる主人公の颯太は、猪突猛進で思いついたら突っ込んでいってどんどん解決するタイプ。こちらは、太田快作さんがモデルです。一方、柴崎は冷静に考えてシステムから変えていく、理論を重ねていって殺処分ゼロをめざすというタイプです。ふたりを「静と動」の真逆のタイプにしようと考えたんです。
だけど理論でおしていこうとした側が理論に負ける、理論だけでは解決できない辛さがあるじゃないですか。そういったことを、柴崎というキャラクターを通して表現したいと思いました。
台湾では、不幸な事件もありましたが、2017年、殺処分ゼロが達成されました。そこにいたるまでには、亡くなった獣医さんをはじめ、現場で闘ったたくさんのひとがいたんです。