2021年8月2日 11:00
ヒマラヤへ通う美容師 リウマチの激痛を乗り越え見えたもの
彼女を過酷な冒険に駆り立てたもの、それは、偉大な先人への憧憬だけではない。
■「手首を切り落としたいほど痛い……」リウマチを患ったことが転機に
1973年、東大阪市生まれ。美容専門学校に進学したころ、彼女の人生に病が影を落とす。
「18歳のとき、足首を痛めて『捻挫かな』と思ってたけど、半年経っても痛みが引かないので、病院行って血液検査受けて。診断結果はリウマチって……」
10代だった稲葉さんは病名を聞いても、ピンとこなかった。
「『温泉行ったら治るかな』なんて軽く考えてた。でも、母はショック受けて、目に涙浮かべながら『治らん病気やで!』って。私も本、読みまくって。
知れば知るほど、落ち込みました」
日増しにひどくなる痛みを抱えながら、稲葉さんは美容師に。就職先の美容室のオーナーは、彼女の病気に理解を示し、治療のため営業中に店を離れることも認めてくれた。でも、店の先輩のなかには、営業途中に抜けがちな彼女のことを快く思わない人や、彼女の持病について無理解な人も少なくなかった。
「新人ですから、来る日も来る日もシャンプーで、手首むっちゃ使って。だから。もう、手首の軟骨は、なくなっちゃった」