2021年10月24日 06:00
レジ打ちからホテル社長へ 元専業主婦社長が語る「埋もれた人材」
当初の予定では世界中から来日する大勢のお客さんたちをもてなす人間が必要だったんです。そこで、私がホスピタリティの責任者に選ばれたんです。
具体的な仕事は、会社が購入する観戦チケットの選定や発注、それにお客さんたちのためのホテルはもちろん、海外から来るスタッフの宿泊先を手配するのも重要な仕事でした」
真面目な薄井さんは、オリンピックやパラリンピックの全競技を改めて勉強し、分析。競技ごとの観客の熱中症の危険度まで調べ上げたうえでチケットを購入するなど、抜かりなく準備を進めていた。
ところが、いよいよオリンピック開幕のカウントダウンが始まろうとするころ、東京は、いや、世界は予期せぬ事態に見舞われてしまう。新型コロナウイルスの感染爆発にさらされたのだ。
「20年春に東京大会の1年延期が決定し、今年に入ると、本国アメリカのコカ・コーラの本社も、海外から東京にお客さんを送らないことを決めた。その時点で、私の仕事はなくなったんですね」
今年2月、薄井さんは失職する。
61歳だった。
■レジ打ちのパートを体験。職場の主婦たちに“埋もれている人材”がいることに気づく
「年金がもらえるようになる65歳までは、働きたかったんですね。