くらし情報『89年間ゲイを隠して西成へ カムアウトし見つけた「家族」たち』

2021年12月5日 06:00

89年間ゲイを隠して西成へ カムアウトし見つけた「家族」たち

「紙芝居劇むすび」の看板女優となった長谷さん

「紙芝居劇むすび」の看板女優となった長谷さん



「ほな、これ被ってなぁ」

舞台の本番を前に、劇団員の女性がこう言いながら、日本髪のカツラを、おじいちゃんの頭に被せている。今日の彼の役どころは、明治時代の居酒屋の女将(おかみ)だ。

「おー、バッチリやん、かわいい、かわいい!」

そう言われたおじいちゃんも、まんざらでもない様子。やわらかな笑みを浮かべて「あ~ら、そう?」と小首をかしげ、台本を持つ手でしなを作ってみせている。

ここは大阪・西成。「あいりん地区」とも「釜ヶ崎」とも呼ばれ、かつては、日本の高度経済成長を支える労働者の町だった。しかし、彼らも一様に年をとり、いつしか多くの高齢者が暮らす、福祉の町になった。

そんな西成で、独居の高齢者たちが中心となって活動しているのが「紙芝居劇むすび」だ。
一般的な紙芝居と違い、複数の演者がそれぞれの役に扮してセリフを朗読するユニークな手作りの紙芝居で、福祉施設や保育所などで定期的に公演を打つ。町のイベントにも欠かせない存在で、この日も、とある高齢者施設での公演だった。

むすびに3年前に参加し瞬く間に“看板女優”となったのが、先述の女将役を演じていた御年92歳のおじいちゃん・長谷忠さんだ。

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