2022年6月26日 06:00
全盲の弁護士と音楽家の夫婦 子どもたちの笑顔は心に映って
「う〜ん、こっちかな。ママにはこの色のほうが合ってると思うよ」
愛娘の言葉に、にっこりとほほ笑む母。台所からは肉の下ごしらえが済んだのか「パパ、できたよー」という響くんの声。ここで、父母それぞれが、くしくも同じ言葉を子どもたちにかけるのだった。
「ありがとう!」
誠さんと亜矢子さん、ふたりはともに全盲の夫婦だ。
誠さんはハンディキャップを乗り越え、司法試験に合格。日本の法曹界史上3人目の、全盲の弁護士になった。幼いころからピアノを続けてきた亜矢子さんは、音大を卒業しソプラノ歌手に。
弾き語りのミュージシャンとしても活躍。上皇后美智子さまの前で、歌声を披露したこともある。
ふたりは’10年に結婚し子宝にも恵まれた。しかし……。健常者でもたいへんな子育て。記者は素朴な、でも、不躾な質問を、ついつい、ぶつけてしまった。「目の見えないふたりがどうやって?」と。
「もちろん、できないことや難しいこともあります。
でも、そこは割り切ってといいますか、見える人の手を借りながら、ですね。それに、いまでは子どもたちも自分のことは自分でできるようになりましたし、私たちを手助けしてくれる場面も少なくないんですよ」