2022年6月26日 06:00
全盲の弁護士と音楽家の夫婦 子どもたちの笑顔は心に映って
やはり、部屋を貸すことを断られた不動産会社からの帰り道。母は涙ながらに息子に言った。
「誠、ごめんね。アパート借りてあげられなくて……」
誠さんはこのとき、弁護士への思いを、さらに強くしたという。
「自分の子どもに障害があることで、その母親が泣きながら謝らなければならないなんて、そんな社会は間違ってる。社会を変えるためにも、僕は弁護士になる」
なんとか部屋も決まり、大学に通い始めた誠さん。ときに理不尽な扱いを受けながら、それでも充実した大学生活を送ったが、難関の司法試験が一筋縄でいくはずもない。大学4年、初受験の結果は「惨憺たるものだった」という。
大学卒業後は司法試験専門の予備校に通って勉強したいと考えた。しかし、大学受験のときと同じように、多くの予備校が全盲の彼の受け入れを渋った。ハンディキャップを改めて突きつけられる思いだったが、1校だけ、誠さんを受け入れてくれる予備校が見つかる。
「うれしいことにその予備校は『どんな人もサポートします』と言ってくれたんです。問題集など全教材を電子データで提供してくれたのも、ありがたかったです」
電子データであれば、誠さんはパソコンの読み上げソフトを使って、内容を音声で聞いて覚えることができるのだ。