くらし情報『芥川賞作家・若竹千佐子 最愛の夫の死の裏に見出した”自由の喜び”』

2018年4月21日 11:00

芥川賞作家・若竹千佐子 最愛の夫の死の裏に見出した”自由の喜び”

 

しかし、家事や夫の身の回りの世話など、主婦である若竹さんは夫婦の暮らしの維持に時間を割かなくてはならない。それが、もどかしかった。

「もちろん、夫が嫌いということじゃない。けれど、“私は私で生きたい”と思い始めてたんですよ。そしたらば、夫が突然、死んだ。だから、夫が死んだのは、私がそんなふうに思ったせいなんじゃないかと……」

夕飯の買い出しに出れば、夫の好物に手が伸びる。そのたびに、胸がキリキリと痛むほどの孤独と自責の念に駆られた。その日も、そんな思いにさいまなれた午後だった。


「仏壇の前で、何もやる気がおきなくて、ゴロンと横になって目を閉じたんです。やっぱりめそめそと泣きながらね。どれくらい、そうしていたのかわかりませんが、不意に目を開けたら強い光がバーッと目に飛び込んできたんです。障子の桟のくっきりとした影が畳に延びていました。その光を『わ、きれいだな』と思った瞬間、頭の中にはっきりとした声が聞こえたんです。『自由だ!おらは自由だ!』って」

驚いた。

関連記事
新着くらしまとめ
もっと見る
記事配信社一覧
facebook
Facebook
Instagram
Instagram
X
X
YouTube
YouTube
上へ戻る
エキサイトのおすすめサービス

Copyright © 1997-2024 Excite Japan Co., LTD. All Rights Reserved.