2021年7月5日 19:50
東京湾の人工島で行われたKing Gnuシークレットライブレポート 舞台裏に密着したビハインドザシーンの公開も決定
狂騒極まるステージから一転、常田による静謐なピアノソロへ。上空を横切るヘリコプターの音がむしろ外界と隔絶されたこの場を際立たせるように感じられる中、始まったのは“the hole”だった。繊細で美しく、同時に地を這うような新井のシンセベースの響きを含め、次第に重厚な熱量が増していくこのバラードは、いまのこの状況だからこそひと際強く響いた。その後、再びステージが白煙に包まれたかと思いきや、タンクトップと赤いハーフパンツに早着替えした井口が登場。“Teenager Forever”に突入した。いつも以上にノリノリで飛び跳ね踊りまくりながら歌う井口に、常田が歌いながら思わず吹き出す一幕も。
ラストは“サマーレイン・ダイバー”。幻想的なオルタナティブ・サウンドと透き通ったメロディが溶け合う、どこか讃美歌のような神秘的な響きを宿した名曲が空へと響いた。ステージを去るメンバーたちの表情は笑顔に満ちていて、彼らにとっても、このライブ体験は二度とない特別なものだったと感じられた。
2日後にはすべて撤収され、再び何もない、ただ砲台跡だけが静かに佇む島となった第二海堡。だが2021年、パンデミックによって世界が大きく揺れ動く過渡期の中で、King Gnuがこの場所で初めてその音楽を歌い鳴らしたという事実は決して消えることなく、歴史の一部となっていく。