ケラリーノ・サンドロヴィッチ KERA meets CHEKHOV最終章『桜の園』は非常に“真っ当”な作品に
ところがチェーホフの場合、言っていることと考えていることの間には大きな乖離がある。そういう意味ですごく革新的な作家だと思いますし、普段自分の書くものに近いんです。独特の情感があるというのもチェーホフならではだと思います。
――中でも『桜の園』という作品にはどんな魅力を感じますか?
やっぱり遺作ですからね。自分自身の死期を悟っていたからなのか、これまでの三作(チェーホフの発表順に『かもめ』『ワーニャ伯父さん』『三人姉妹』)に比べると、明確なゴールが設けられていると思うんです。桜の園が競売にかけられる、8月22日に向かって物語が進んでいきますから。そこが『桜の園』の特別なところかなと。あと『三人姉妹』あたりから、この人のボードヴィル性を感じるんですよね。
『三人姉妹』でフリーキーな奇人たちがポツポツと出没し始め、『桜の園』ではもう奇人ぞろい(笑)。そこは演出する上で少し難しいところでもあると思います。
「チェーホフなのに」ではなく「チェーホフだから」に
――演出だけでなく上演台本もKERAさんが手がけられていますが、執筆に当たって意識したこと、心がけたことは?
僕が戯曲を読んで面白いと思ったことを、そのままやりたいと思っています。