くらし情報『仏女優ジュリエット・ビノシュが語る“是枝映画の魅力と本質”』

2019年10月18日 18:00

仏女優ジュリエット・ビノシュが語る“是枝映画の魅力と本質”

「演技とは、私たちが生きている現実の外にある世界ーそこでは時間の観念すらも異なるでしょうーのリアリティに到達することだと私は考えています。俳優が考えたことや感情を基にしながら、そこで見つけたものも取り込んで、役の感情へと自分が到達するわけです。それはとてもスピリチュアルな場所ですし……言ってしまえば、私たちが現在こうしてお話をしている場所とは違う世界なわけです。つまり、この場所に真実があるように、別の世界にも真実があります。私たちは創作を通じて、そんな場所にある真実に迫っていくわけです」

だからこそ彼女はいつも「自分の心は何かに囚われていないか?」と自問していると笑顔で語る。「私だけでなく誰もが自分の内面にある感情と向き合っているかどうか確かめる必要があると私は思います。自分に考える自由、感じる自由はあるのか?誰かの虜囚になっていないか?って」

ビノシュがこう語るのには理由がある。是枝作品はこれまでも、そして本作でも繰り返し人間の内面に積み重なってきた歴史や記憶、時間を描いてきたからだ。
時にそれらは登場人物の行動を左右し、抑圧し、彼らは自分の中に積み重なった記憶や時間と対峙するのだ。

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