2021年12月8日 12:00
夢を通じて描かれるふたりの女性の物語。監督が語る映画『ラスト・ナイト・イン・ソーホー』
陽が落ち、ベッドに入ったエロイーズは夢の中で1960年代のソーホーを訪れる。華やかな街、いまではクラシックと呼ばれる名作映画の看板、懐かしいメロディに誘われてエロイーズはソーホーを彷徨い、そこで歌手を目指す若い女性サンディに出会う。
自分と同じように夢を抱いて都会に出てきたサンディの姿を追うエロイーズ。やがて彼女はまるで自分がサンディになったような感覚を得て、目が覚めたあとの暮らしにも変化が訪れる。しかし、ある日、エロイーズは夢の中でサンディが殺されるのを目にしてしまう。さらに現実の世界でも彼女は幻を見るようになり、現実と夢の世界はどちらも迷宮のように錯綜していく。
1960年代と現代。世の中は変わったのか? 変わらないままなのか?
撮影現場のエドガー・ライト監督とアニャ・テイラー=ジョイ
本作の最大のポイントは、エロイーズが“夢”を通して60年代のソーホーを訪れることだ。
彼女が目にする華やかな街は、もちろん実際に存在した光景ではあるが、それはあくまでも人間の想像や欲望、無意識が不可思議に混ざり合う夢の世界だ。
「時代考証という点では1960年代のソーホーの風景を忠実に再現したよ。でもこれはエロイーズの夢なわけだから、実際の場所よりも少し空間的に広いセットを建てても“これは彼女の夢なんだから問題ないんだ”って自分に言い聞かせることもあったね(笑)。