“ノーマル”じゃなくてもいい。生きるヒントをもらえる作品 ミュージカル『next to normal』
そして電気けいれん療法を受けたダイアナは大まかな記憶を失ってしまう……。
望海風斗はダイナミックで繊細、傷つき葛藤するダイアナとして説得力抜群。見事に舞台の上で生きている。その風貌と歌の巧みさ、表現力も素晴らしい。甲斐翔真のゲイブはアメリカにいる筋肉隆々の若者そのもので、クリアな歌声が魅力だ。特にラストのほうは白眉なので要チェック。
渡辺大輔のダンは真摯な夫としての紆余曲折を見事に描き出す。こんなに妻に対して一生懸命な人、貴重だよなぁとしみじみ。小向なるのナタリーはスカッと抜ける歌声が素敵。母に対する想いには泣かされる。
吉高志音のヘンリーはイカれた奴かと思いきや、ナタリーを支えるキュートなよき彼氏で、このカップルのやり取りも耳福だ。中河内雅貴は全く異なるドクター二役を完璧に演じ分け、存在感を見せた。
大団円で終わり!となりがちな、一般的なミュージカルとはかなり異なるエンディング。なぜダイアナは双極性障害を患ったのか、また一家の母、妻がこうしたメンタルの病気を患うことで、家族が何を抱え何が壊れてしまうのか。妻と夫、母と子、父と子、それぞれの関係性。しかしどんな苦境でも、未来への希望は何らかの形で灯る。