2021年6月17日 12:00
井上小百合が探すアイデンティティ「自分じゃない何かになってお芝居をしているときが一番楽しい」
そう考えると、『SLANG』では自分の兄を亡くして、さらに自分の恋人が加害者という立場に置かれたときに、私たちが普段目にしているニュースでは加害者だったり被害者だったりの裏側がまったく見えないわけじゃないですか。それで、どういう気持ちでその事件と向き合ったらいいんだろうというのを、すごく考えてしまって。「事件を起こした方が本当はとても優しい人で、とっても大事な人がいたけど、何かのきっかけでそういうことを起こしてしまったのかもしれない」とかいろいろ考えてしまったら、『SLANG』での町野伊都という役をどう向き合って、どう演じたらいいのかとすごく悩みました。
――公演を重ねていく中で、何か糸口は見つかりましたか?
井上無意識に隠れていた言葉の持つ力を知らずに生活していた人の悲劇だったのかもしれないとか、そういうことを考えるうちに、セリフのひとつひとつが全部伏線に思えてきて。なので、言葉のひとつひとつを大事に言うようにしました。
と同時に、言葉については自分が発するだけじゃなくて相手から受け取るときも、より考えるようになりました。自分に見えているものだけですべてを判断しちゃいけないし、そのニュースの話でも、聞いたものに対して「これが100%なんだ」