三菱一号館美術館「再開館記念『不在』―トゥールーズ=ロートレックとソフィ・カル」レポート 「不在」というテーマのもと二人の作品世界が響きあう
フランスの伯爵家に生まれるも、世紀末のパリでポスター作家として名をあげたロートレックは、モンマルトルの夜の街を舞台に、むしろ、「不在」と表裏一体の関係にある人物の「存在」に迫る作品を描き続けたという。そのロートレックを、「不在」という観点からどのように見直すのか。そのひとつの鍵となるのは、同館のロートレック作品が「モーリス・ジョワイヤン・コレクション」を基礎としていることにあるようだ。

展示風景アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック《ムーラン・ルージュ、ラ・グーリュ》1891年

展示風景左よりアンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック《メイ・ベルフォール》1895年、《エグランティーヌ嬢一座》1896年
モーリス・ジョワイヤンは、ロートレックのリセ時代の友人だった人物。画商となった彼は、ロートレックが初めて手がけたポスター《ムーラン・ルージュ、ラ・グーリュ》で一躍大成功を収めた後に再会し、以後は画商として作品を注文したり、個展の開催を助けたり、あるいは友としてその生活をサポートしたり……。そして36歳の若さでロートレックが没し、いわば画家が「不在」となった後には、作品を守り伝え、画家の評価を高めることに尽力したのだった。