三菱一号館美術館「再開館記念『不在』―トゥールーズ=ロートレックとソフィ・カル」レポート 「不在」というテーマのもと二人の作品世界が響きあう

展示風景アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック、アンリ=ガブリエル・イベルスによる共作の版画集『カフェ・コンセール』1893年

展示風景アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック《ロイ・フラー嬢》1893年

展示風景アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック『彼女たち』1896年表紙とポスター手前のシルクハットが、わずかに男性の存在を暗示する。
最後の展示室にある印象的な作品は、ロートレックが船旅中に出会って一目惚れした女性が静かに海を見つめる姿を描いたポスター。画家は目的地で下船せずに、リスボンまでついていき、友人に説得されて、やっと下船したのだとか。そしてこの展示室を出ると、ソフィ・カルの展示が始まる。最初の作品は、海に面したトルコのイスタンブールに住みながらも、貧困などの理由で海を見たことのなかった人々が初めて海を目にしたときの映像をとらえたもの。海を見つめる人々の静かな後ろ姿と振り返ったときの表情が余韻を残す美しい作品だ。

展示風景アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック《54号室の女船客》1896年
1953年にパリで生まれたソフィ・カルは、写真や映像とテキストを組み合わせた作品で知られる。