綾野剛×大友啓史が掴んだ映画の可能性「観たことのない映画ができた」
このあたりで僕のつくるこういった作品が、映画界に少しでも刺激を与えられればという想いはあったし、自分のキャリアを紐解くと大作エンターテイメントが多かったので、自分自身違う可能性を探りたいという気持ちもあった。でも、いちばんは何かと言うと、自分が今観たい映画、大人の映画をつくりたかった、ただそれだけです。勧善懲悪とか簡単なものじゃなくてね。人間って簡単に割り切れない複雑な感情の生き物ですから、その複雑さをあまりコントロールせずに、じっくり描きたいなと。日本では今、こういう文学的な映画をつくるのは難しいんだけど、あえてそこに挑戦してみたかったんです」(大友)
綾野くんは、静かに怒っている俳優だと思う
綾野剛と松田龍平というキャスティングは、大友監督たっての希望だった。監督は本作を「静かに怒っている映画」だと表現する。
「今野はセクシャルマイノリティで、きっと腹の中では社会に対する怒りを色々溜め込んでいるけれど、理性でそれを封じ込めようとして生きている人。そう易々と発散しないわけです。
これを、狂気を持たない俳優が演じるとすごくフラットな役になる。脚本の表面上だけをなぞるんじゃなくて、その奥にある怒りを当たり前のようにたたえてくれている人かどうかが、キャスティングでは重要でした。