リセット・オロペサ いま一番勢いがあるソプラノの十八番にしびれる
知名度はまだヨンチェヴァにおよばないかもしれないが、勢いではけっして負けていないのが、スペイン系アメリカ人のソプラノ、リセット・オロペサだ。
ここ最近だけでも、英国ロイヤル・オペラなどで歌ったヴェルディ《リゴレット》や《椿姫》、ウィーン国立歌劇場やチューリッヒ歌劇場でのドニゼッティ《ランメルモールのルチア》等々で、劇場が驚くほどの圧倒的な成功を収めている。
たとえば、英国ロイヤル・オペラでの《リゴレット》のジルダ。オロペサの艶と輝きがある声は、どの音域でも声質が一定で、常に自然に響きわたり、すみずみまでコントロールが行き届いている。そこに声にニュアンスや色彩ばかりか、場面に応じて温もりや冷たさまでが載せられ、さまざまな感情が浮き上がる。彼女の歌唱を得て、ジルダの悲劇がどれほど深まったことだろうか。カーテンコールもオロペサの圧勝だった。
だから世界中が放っておかない。
先々まで世界の一流と呼ばれる歌劇場でばかり、主役を歌うスケジュールがぎっしりと詰まっている。そんな合間を縫って来日してくれるのだから、ほんとうにうれしい。
しかし、正確にいえば、オロペサは初来日ではない。2018年の夏にイタリアでインタビューした際、日本が好きで、ご主人と何度か訪れた旨を語っていた。