くらし情報『生と死の境で、言葉の真実を見極める奇跡について思う 『フェイクスピア』観劇レポート』

2021年6月9日 17:00

生と死の境で、言葉の真実を見極める奇跡について思う 『フェイクスピア』観劇レポート

ダブルブッキングで鉢合わせしたこのふたりが、イタコのアタイを押しのけて何者かに憑依したように不思議な対話を始める。それはシェイクスピア悲劇の台詞であり、その言葉に呼ばれるように“シェイクスピア”(野田)も現れて……。

生と死の境で、言葉の真実を見極める奇跡について思う 『フェイクスピア』観劇レポート


半人前のアタイを叱り飛ばす先輩イタコ、“オタコ姐さん”役の村岡希美は持ち前の艶やかな声と小気味良さで、神の使いと称して現れる“アブラハム”役の川平慈英と“三日坊主”役の伊原剛志はどちらもボケ担当の漫才コンビのような愉快な掛け合いを見せて、野田が仕掛ける異空間を快走し、軽妙なリズムを巧みに刻んでいく。稽古に入る前のぴあアプリ取材でNODA・MAP初参加を心から喜んでいた前田敦子は、アタイの母親らしき“伝説のイタコ”と“星の王子様”、そしてある重要な出来事の象徴となる“白い烏”の三役を担い、全力の声の張りも清々しく、猛進の演技で視線を集めていた。


生と死の境で、言葉の真実を見極める奇跡について思う 『フェイクスピア』観劇レポート


時に整然、時に多様なアンサンブルの俊敏な動きが想像の空間を膨らませ、テンポよく繰り出されるキャラクターたちの言葉が頬を緩ませる。ただ、笑いを誘うその勢いの中で、高橋一生の深く、明瞭に響く独白から、その手に持つ怪しげな匣から、橋爪功の朴訥なつぶやきから、震撼の記憶を呼び覚ます言葉が漏れていく。

関連記事
新着くらしまとめ
もっと見る
記事配信社一覧
facebook
Facebook
Instagram
Instagram
X
X
YouTube
YouTube
上へ戻る
エキサイトのおすすめサービス

Copyright © 1997-2024 Excite Japan Co., LTD. All Rights Reserved.