吉澤嘉代子「もう胸がいっぱいです」デビュー10周年記念公演オフィシャルレポート
続いてベールを脱ぎ、ステージをくるくると舞いながら「怪盗メタモルフォーゼ」を歌唱。スカートをふわりと揺らして艶やかに踊る吉澤は、曲の主人公である“怪盗に変身した異国の町娘”そのものだ。2曲歌い終えると、再び朗読が始まる。「子供がふたり、ささやきあっているのが聞こえますか?どうやら大人になると、あの声は聞こえなくなってしまうらしいのです。私たちにはまだ微かに聴こえているようです。耳をすませて…」
するとステージ上の黒電話にスポットライトが当たり、電話が鳴って「えらばれし子供たちの密話」へ。観客のクラップやバンドが生み出すグルーヴと融和しながら、声色を巧みに操り歌う吉澤。「オートバイ」では、ゴンドウと武嶋によるホーンや美央のストリングスが楽曲を壮麗に仕立てる。
「グミ」では吉澤と弓木に加え、伊澤もエレキギターを演奏。主人公の不気味さが見え隠れする歌詞を、絢爛なサウンドが引き立てていた。
次の3曲では、ダークな雰囲気はそのままに、圧巻のパフォーマンスで客席をヒートアップさせる。吉澤がアコースティックギターをかき鳴らしながら鬼気迫る歌を轟かせた「シーラカンス通り」を経て、間髪を入れずに「薄暗いシーラカンス通りを抜け、わたくしはタクシーに乗りました」