2021年11月12日 12:00
三浦宏規、屋比久知奈ら出演、迫力のダンスと歌で魅了する青春群像劇 ミュージカル『グリース』ゲネプロレポート
地声の高音をカツンと響かせられる喉の強さ、ビブラートを駆使して情感豊かに表現できるテクニック、細かいニュアンスまで振付師の意図通りに体現できるダンス力を併せ持った俳優がこうも揃った座組は、ベテランキャストが中心の舞台でもそうは見かけない。そんな面々が、フレッシュな魅力ももちろん振りまきながら恋の悩みと喜びを爆発させ続けるのだから、観ているこちらはニヤニヤが止まらないというわけだ。
“歌だけ”“踊りだけ”“セリフだけ”の時間を多く作らず、アンサンブルも含めた全員に常に各々のキャラを打ち出した芝居をさせ、何かというとミラーボールを回しちゃうような、上田一豪の躍動感あふれる演出も良い。また、セリフや振る舞いをあえて思いっきり昔風にしているのも(翻訳・訳詞も上田)、ハイテンションなアメリカン・ミュージカルを翻訳上演する際に起こりがちな違和感を防いで効果的だった。
ソーシャルディスタンスにコンプライアンス、インクルーシブにカーボンニュートラルと、近頃の世の中は色々とややこしい。もちろんどれも真剣に向き合わねばならない問題だが、歌って踊って恋をするだけのシンプルな人生が、そんな平和な世界を見つめるだけの時間が、たまにはあってもいいじゃないか!という気持ちにさせてくれる快作。