『没後300年記念 英一蝶
―風流才子、浮き世を写す―』レポート 風流にして才気あふれる絵師の多彩な画業と波乱の生涯をたどる
江戸時代の元禄年間前後に活躍した英一蝶(はなぶさ いっちょう/1652-1724)は、狩野派のもとで正統な教育を受けつつも、市井の人々を生き生きと描いた独自の風俗画を描いた絵師だ。わけあって三宅島へ流罪となるなど、波瀾万丈の生涯を送りながらも、幅広いジャンルで才能を発揮し続けた。その没後300年を記念する過去最大規模の回顧展が、東京・六本木のサントリー美術館で開催されている。
展覧会入口のメインビジュアル重要文化財《布晒舞図》遠山記念館(展示期間:10/16~11/10)
第1章展示風景英一蝶「雑画帖」一帖大倉集古館(通期展示※場面替あり/本場面の展示期間:9/18〜10/14)
伊勢亀山藩主の侍医を父に京都で生まれた一蝶は、15歳(8歳という説もある)の年に藩主に伴い一家で江戸に下り、狩野安信に入門。江戸狩野派の高い絵画技術と、古典に関する幅広い教養を身につけた。当初は主に多賀朝湖(たが ちょうこ)の名で活躍した一蝶の優れた画力は、「第1章 多賀朝湖時代」に登場する36図からなる「雑画帖」からも明らかだ。迫力ある龍の水墨画に、まるまった姿が愛らしい猫の著色画、山水や花鳥、人物など、画題も描き方も実に多彩で、絵に応じて紙の形も変えている。