疲れた現代人の心に効く言葉ーーそれは時に小説の中に隠れていることもあります。即効性のあるマニュアル本とは違った、じわじわと自分の心に効く言葉をご紹介していきます。
羽田圭介さん『スクラップ・アンド・ビルド』#心に聞く言葉

今回は、芥川賞を受賞した羽田圭介さんの著書『スクラップ・アンド・ビルド』から。
「そんな行動とって、どうしてほしいか、ちゃんと出口は考えているわけ? なんの考えもなくそうやってぐだぐだしていれば周りの人間がどうにかしてくれるとでも思ってるんじゃない。それとも俺におんぶや抱っこでもしてほしいの? お望みとあらばそれくらいやってやるけど、まずどうしてほしいのか言ってもらわないとなんも始まらないよ」
――羽田圭介著『スクラップ・アンド・ビルド』
主人公である28歳の健斗は、5年間勤めたカーディーラーを退職した後、行政書士試験の勉強に専念するという名目で働かずに暮らしています。同居しているのは、毎日忙しく働く母親とその実父である祖父。高齢の祖父は身体のあちこちが悪く、口癖のように「早う死にたか」と毎日ぼやいています。
最新の医療で生かされている祖父。そんな祖父を気づかう孫
どんなに身体が辛くても、最先端の医療技術によって無理やり生かされ、周りからは邪険にされている。
…