2019年2月10日 20:00
白黒つけられない曖昧な感情もあっていい。自分の心と向き合うための言葉

詩人の最果タヒさんのエッセイ『百人一首という感情』(リトルモア)は、学生時代に古文が苦手だった人にこそ、ぜひ読んでほしい一冊。百人一首が自分の心と向き合う時間をくれるとは、この本に出会うまで思いもしませんでした。
「勉強」とは違う百人一首の世界
百人一首の現代語訳に取り組み、2017年秋にその成果を発表した(※)最果タヒさん。一年後に刊行された本書には、訳していくなかで最果さんが感じたこと、千年前の歌人に「ふと言いたくなったこと」などが、みずみずしい筆致で綴られています。
※
清川あさみさんとの共著『千年後の百人一首』(リトルモア)。最果タヒさんが手がけた百人一首の現代語訳に、
清川あさみさんが布・糸・ビーズなどで描きおろした百の絵札が添えられている。
百人一首を詩の言葉で訳してほしい、という依頼を受けたのは2016年。それまでも、百人一首には触れてきていたけれど、どれもが「勉強」としてだけだった。文節ごとに言葉を区切って、現代語に変換していき、時代背景と比べながら意味を考え、直訳していく。いつの間にか和歌っていうものは、そうやって楽しむものだと私は思い込んでいた。
(『百人一首という感情』「はじめに」
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