いつか、わたしの忘れ形見となる、大切なもの。【my lovely simple life in London vol.7】
最近、残念なことに母を亡くした。
アメリカに何十年も暮らし最後の地をアリゾナの雄大な景色の中に決めた母の形見分けを妹と弟と笑い泣きをしながらすませて、ふと、私の形見って何かしらと思ってしまった。
まずは、イームズのロッキングチェアーだ。
話は以前ビンテージ家具のアップサイクリングを得意とする、イギリスのお店ファイヤーフライハウスとコラボをしていた時にさかのぼる。その時どうしてもデザイン料のきまらないファブリックがあり、「デザイン料の代わりに、イームズのロッキングチェアーが欲しい」ととんでもないことを言った私。
担当者のラッセルが、では少し時間をくれと言い、1960年代のレモン色のシェルチェアーに、色が飴色になるようにとウッド部分の色もじっくりと選んで組み立ててくれたものだ。ファイヤーフライハウスは、ミッドセンチュリーの家具を得意としていて、入荷先も販売先にもこだわる人たちだから、きちんと選んでくれたんだなという事がよくわかる組み合わせだった。
それが届いた日は、その椅子の上で随分長い時間ニコニコと揺られて家族にあきれた顔をされた覚えがある。