いつか、わたしの忘れ形見となる、大切なもの。【my lovely simple life in London vol.7】
それを磨きながら、「これ、私が死んだらあんたにあげるからね。ママちゃんが、これに坐ってゆらゆらしてたの思い出してね」と娘にいったら、映画「サイコ」のようでそれは怖いと言われた。
二つ目はルイヴィトンのホールドオールだ。これは、私がまだとても若く無謀だったころ、20歳のプレゼントにと、父が買ってくれたものだ。それ以来ずっとお気に入りで、私と一緒に何度も海を渡ってきた。
ところが、そうこうしているうちにジッパーがこわれてしまい閉まらなくなってしまった。途方に暮れた私は、そのままバッグをしまい込み、数年がすぎてしまった。
ベッドルームの模様替えということで、久しぶりにそのバッグを引きずり出し、思い切って私はロンドンのボンドストリートにあるルイヴィトンに連絡をした。
「父が数十年前に買ってくれて、私の生活の大切な一部だったのにジッパーがこわれて、あきらめて使わずに何年もたちましたが、直してもらえませんか」とのメールに、「持ってきてください」との返事。ボンドストリートのキラキラしたお店に恥ずかしい思いをしながら古ぼけたバッグを持っていった。「パリに送ってみます」と受け取ってくださり、数週間後、「なおりましたよ、とりにきてください」