Musée Yves Saint Laurent - イヴ・サンローラン美術館 -【Nahoのおパリ文化回覧帳 vol.7】
黒のベルベットに刺繍が入った中央のロングドレスは、パリのクリュニー中世美術館に所蔵されているLa dame à la licorne(貴婦人と一角獣)からインスピレーションを受けて制作されたもの。シルクのベルベットは大変美しく、同様に絹で施された刺繍も見事な職人技でした。
私はベルベットが大好きなので、しばらく固まったように眺め、言葉に例えるのが無意味なほど、深い感動を覚えました。そこには、たくさんの才能が結晶となって遺っていたからです。
それから、サンローランのシンボル的存在であり、珠玉作品の一つでもあるCoeur (ハート)。
宝石そのものの存在感や輝かしさだけではない魅力が、そこには在りました。血の滴るハートは、どこか痛々しく生身のようで、サンローラン自身の生涯と重なりました。
彼の創作に対する熱意も、こうして心血を注いでいったからこそ、後世に残る素晴らしい作品が作られていった、というのは言うまでもありませんが、それを一つの作品の中に凝縮して物語っている様に思えたのです。