『殺人の追憶』のラストで、ソン・ガンホが演じる刑事は、覗き込んだ排水溝の奥に何を目にしたのか……。見つめる先を確かめたい欲求に心をかき乱されたわれわれ観客は、同じポン・ジュノ監督のこの『スノーピアサー』で、次々と目の前に迫ってくる“その先の光景”の鮮烈なビジュアルに圧倒され続ける。とにかく“見せて”驚かせる。自らの作風をアップデートさせる監督の強い意志に呆然とするしかない。もちろん監督のファンでなくとも、本作はシンプルに楽しめるだろう。
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ストーリーは単純明快(このあたりも過去の彼の作品と印象が違う)。列車の後部車両で悲惨な生活を強いられてきた主人公たちが、一同決起し、前部車両に突進していく。近未来の格差社会で起こる革命が、1本の長い車両での“前進”によって展開するので、見た目にもひじょうに分かりやすい。
ドアを開けるたびに出てくるユニークな車両風景で、テーマパークのアトラクションに乗っているような感覚も与えてくれる。革命団の、前へ、前へという方向性が映画自体の強力な推進力にもなった。
そんなアトラクションに乗っていた観客は、要所で激しい一撃も喰らい、そこにポン・ジュノの本領が発揮される。