『髪結いの亭主』『仕立て屋の恋』などで知られる恋愛映画の名手、パトリス・ルコント監督。前作『スーサイド・ショップ』ではアニメに挑んだ彼だが、新作『暮れ逢い』では大人の恋愛映画に回帰した。
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今回の物語は『マリー・アントワネット』などの歴史小説で知られるオーストリアの作家、シュテファン・ツヴァイクの短編小説がベース。鉄鋼業で成功を収めた実業家ホフマイスターの若き妻シャーロットと、そのホフマイスターに見初められ個人秘書に抜擢された若き青年フリドリックという許されぬ恋に落ちたふたりの純愛が描かれる。再び“愛”を主題にしたことをルコント監督はこう明かす。「今の時代、メイク・ラブの扱いがとても軽い気がしてならない。その風潮に対して、一石投じたい気持ちがどこかにありました」
作品はルコント監督の過去の恋愛映画にも通じる、秘めたる恋の物語。互いの立場や気持ちを想うふたりは最後の一歩に踏み出せないながら、それゆえ愛は高まる。
その心の葛藤を、『アイアンマン3』などハリウッド大作への出演が続いているレベッカ・ホールと、ディズニーの新作、実写版『シンデレラ』で王子役に抜擢されたリチャード・マッデンが見事に体現している。