和央ようか演じる中性的ドラキュラが陶酔の世界へといざなう
その行く手に、ヴァン・ヘルシング教授とその仲間たちが立ちふさがる……。
ゴシックでロマンチックな世界観にどっぷり酔える3時間だった。その一番の要因はやはり和央演じる中性的なドラキュラにあるだろう。最初は老いた姿のドラキュラが若さを手に入れ颯爽とした姿で現れたとき、現実離れしたものの存在感に目を見張った。自分本来の人間らしさ、女性らしさを排除し、ここまで非リアルな存在を体現できるのは、やはり6年もの長きにわたり宝塚男役トップスターに君臨した和央ならではであるだろう。その非リアル性に大きく貢献したのは言わずもがな、盟友・花總まりの存在。気高く賢い、いわゆる理想的な女性でありながら、ドラキュラの倒錯した魅力に本能的に惹かれてゆくミーナの愛と苦悩を演じきる。ドラキュラとのキスは、まるでラブシーンのお手本のような美しさだった。
またワイルドホーンといえば、聴く者の心を激しく揺さぶるドラマチックな楽曲で知られるが、本作でも印象的なナンバーが次から次へと押し寄せる。歌、ダンス、ビジュアルなど大事な歯車がすべてピタッと噛み合うことにより、極上の陶酔感が味わえた。東京公演は9月11日(日)まで。その後、9月15日(木)