くらし情報『痛みと共に爽やかな後味を残すキャラメルボックスならではの舞台が開幕』

痛みと共に爽やかな後味を残すキャラメルボックスならではの舞台が開幕

演出の成井豊と真柴あずきは、チャーリイの知能の高低によって単語や助詞の使い方が変化する「経過報告」の文字を、舞台奥に映し出すことで印象的に挿入。名訳といわれる原作の日本語訳(翻訳:小尾芙佐)がもつ文学的味わいを損なうことなく再構築する。繊細なたたずまいの多田と、強い眼差しをもつ渡邊という瑞々しいコンビを取り囲むのは、ニーマー教授役の大内やチャーリイの母親ローズを演じる坂口理恵、父親マットに扮する三浦剛ら劇団のベテラン陣。清濁併せ呑みながら人間社会を生きているかれらがリアルだからこそ、概念上の善悪でしか判断できない未成熟なチャーリイの戸惑いが際立ってみえる。

親子、友人、恋人、教師と教え子、それらの関係性で浮き彫りになる個人の尊厳。一筋縄ではいかない多面的な問題が、舞台というフィールドで立ち上がり具現化された。それでも物語の導入部や、チャーリイとアルジャーノンが逃避行を繰り広げるくだりなどは、未知の世界へと足を踏み出す若者の揺れる思いを伝えて爽やか。原作通りの切ない幕切れも気持ちのよい感動を残すのが、キャラメルボックスならではの魅力だろう。


公演は7月21日(土)から8月12日(日)

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