2012年9月10日 15:04
ひたむきな愛に生きる松たか子の再挑戦、『ジェーン・エア』が始動
ジョン・ケアードもその輪に加わって体を動かしているが、ふと足元を見ると……。以前の取材で松が「ジョンさんはいつも稽古場で裸足。足の裏を真っ黒にしているんです(笑)」と教えてくれたとおり、ケアードはずっと素足で稽古場を歩き回っていた。そんな演出家の熱い姿勢が示唆するように、“初日は軽い思い出し稽古だろう”との取材陣の予想を覆す、集中度の高い稽古が進行していった。
入念な発声練習を終えていざ、セリフをまじえた歌稽古に突入。魂を絞り出すような橋本の「ジェーン!」という物悲しい叫びに、初演の荒野の風景が一瞬にして呼び覚まされる。両親を亡くした幼いジェーンをひきとって虐待する叔母のリード夫人に扮するのは、初参加となる阿知波悟美だ。その重く険しい声の響きが稽古場全体をピリリと引き締める。
新たなリード夫人の誕生をケアードが深くうなずきながらみつめていた。ジェーンが過ごす教育施設ローウッド学院の院長に扮する壤晴彦が、さらに厳格で冷酷な声を響かせて緊張度を押し上げる。苦しい日々の中で自由を心から探し求めるジェーンの思いを松が力強く絶唱すると、周囲から感嘆のため息とともに拍手が沸き起こった。途中、歌詞にある「許し」