が、マコト・ヒライという芸術家を描いた映画の脚本執筆のために用意された部屋だ。プロデューサー(長谷川)と映画監督(田口)と打ち合わせをしていると、突然、出資者の男(竹中)が秘書(菅原)を引き連れてやって来る。「マコト・ヒライの大ファン」だという男は、あらゆる資料をホテルに運び込み、彼の生涯について熱く語りだし、さらには打ち合わせを見学したいと言い出す。「自分のことは無視してくれていい」と言う男だが、脚本家がアイデアを語り始めると「これはきっとすごい映画になりますよ!」と期待をかけはじめる――。
不協和音が鳴り響く中で幕が開いた本作。スイートルームの空気を支配するのは、竹中演じる出資者の男だ。笑顔でゆっくりと近づいてきて、気付けば思考力まで奪うような恐ろしい存在を竹中が怪演。その支配はしんしんと積もっていき、いつしか登場人物たちは、彼の明らかに常軌を逸した行為すら受け入れるようになっていく。
途中、追い詰められた脚本家のもとに劇団の友人(黒田)が訪れたとき、その温度差からハッと異常さに気付かされ、恐怖を感じた。客席までも支配する狂気の中、脚本家は過剰な期待に応えられるのか…。その結末はぜひ劇場で。