2021年9月13日 23:05
複雑な家庭環境で育ち介護職の資格を持つ作家・森美樹さん。「『母親病』では自分の経験が役立ちました」#2
嫌悪感すら抱いていた母親が突然、死んだ。40歳の珠美子は母親・園枝の死の謎を追うなかで、仲睦まじかったはずの両親の秘密や園枝と親密な関係の25歳の青年の存在を知っていく。母親として妻として、完璧な役割を果たしてきたはずの園枝が人生の最後に望んだものとは――。
現代を生きる女性たちの孤独と光を描いた『主婦病』で多くの読者の心をつかんだ森美樹さんは、最新刊『母親病』で家族や母親のあり方に真正面から斬り込んでいます。インタビュー2回目は、ご自身の経験を踏まえて『母親病』に込めた想いなどをお聞きしました。
★前回:2人の母を持つ女性作家・森美樹さんが最新刊『母親病』を語る。「私には実母と継母がいるんです」#1
“介護職員初任者研修”の資格が執筆に役立った
――2話目の「砂の日々」は、脳溢血の後遺症から半身不随となり認知症も患った園枝の夫と、園枝自身も世話になっていた訪問ヘルパーの平沼光世の視点で物語が進んでいきます。
森さん家族ではなく第三者から見た園枝像を書きたかったんです。
光世には中学生の娘がいるので、同じ娘を持つ母親として園枝とは対比的に描きたいとも思いました。
――白黒のボーダーの服はお葬式を連想させるので避ける、使い捨て手袋をはじめ私物はすべて介護先から持ち帰るなど、介護にまつわる細部の描写がとてもリアルでした。