くらし情報『美しい街と雨が容赦なく露わにする“若さ”の正体【レイニーデイ・イン・ニューヨーク】』

2020年7月4日 13:00

美しい街と雨が容赦なく露わにする“若さ”の正体【レイニーデイ・イン・ニューヨーク】

思えば私もそうだった。

学生だった時に求めたのは、自分の予測不可能な男でも、私自身が知らない自分の一面を教えてくれる男でもなく、自分の見てもらいたい姿で自分を眼差してくれる男だった。それは自分のアイデンティティが、まだ現実と折り合いをつけていない時分の、身勝手で夢見がちな願望だ。私は自分が思っていたよりずっと凡庸で、大それたことができるわけでもないのにみんなと違う姿に憧れ、自分が特別な人間である期待と、自分が何者でもないのではないかという不安の間で時々脈絡のない選択をするような、ありふれた若者だった。そして自分のありふれた形を認めたくなくて、恋のお相手を使って自分の非凡さを見つけたがった。そういう若者にとって恋愛は実に便利で、世界で自分だけしかなしえないことなんて本当は何もないのに、相手にとってたった一人の存在になることで、何者か定まっていない自分はたちまち特別な存在になれる気がした。幼い頃に読んだ少女漫画が全て、大した特徴もない普通の女の子が、誰かに選ばれることで特別な物語の主人公になる話だったことと何も変わらない。自分のことを何かの拍子に選んでくれた男の子の視線を通して与えられる、ある意味身の程知らずの不当な評価をありがたく身に纏(まと)

関連記事
新着くらしまとめ
もっと見る
記事配信社一覧
facebook
Facebook
instagram
instagram
twitter
twitter
YouTube
YouTube
上へ戻る

Copyright © 1997-2021 Excite Japan Co., LTD. All Rights Reserved.