と書かれていますが、批評を書いて人と見せ合ったり、読み合ったりすることに、すごく重きを置いていることが分かる。そういう内容を書こうと思うのは、とても北村さんらしいなと思いました。
作品や芸術を媒介にして人とつながる
北村:ありがとうございます。森山さんはご存じだと思いますが、私は全然コミュニティにいられないタイプの人間なんですよ(笑)。そんなに友人が多くないし、付き合いやすいタイプではないと思うのですが……。でも、友人ができない人が何を媒介に友人になるかというと、作品とか芸術なんですね。人付き合いがうまくない人でも、作品や芸術を媒介にして人とつながったりするんです。
コミュニティを作って、ネットワークができるだけで、社会的にも政治的にも芸術的にも、さまざまなものが生まれてくる。博士論文を基にした『シェイクスピア劇を楽しんだ女性たち―近世の観劇と読書―』(白水社)も、『批評の教室』も、そんなことを念頭に置いて書いた本ではありますね。実は、最初に博士論文を書き始めたときは、コミュニティのことを書くとはまったく思ってなくて。スタンリー・フィッシュの解釈共同体論をやっていて、ほかにもコミュニティ関係の研究書を読んでいたら、「私がやりたいのはこういうことなんじゃないかな」
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