
心理士として15年、人々の心の問題に向き合ってきた東畑開人(とうはた・かいと)さん(39)による新刊『なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない』(新潮社)が3月16日に発売。1週間足らずで重版が決定し、話題を呼んでいます。
これまで私たちを守ってくれていた社会のしくみやつながりが壊れ、遭難しようが沈没しようが自己責任の“小舟化した”社会。自由だけれど気がつけば孤独に陥りやすい社会で私たちはどんなふうに生きていけばいいの?
東畑さんに3回にわたってお話を伺いました。第1回目のテーマは「傷つくかもしれない関係の価値」です。
大船から小舟の時代へ…今、必要とされる心理学の本を書きたかった
——同書は深層心理学者のユングの言葉「夜の航海」をコンセプトに書かれています。「夜の航海」は誰の身にも起こる人生の危機の時期を指すそうですが、執筆されたきっかけを教えてください。
東畑開人さん(以下、東畑):「読者の役に立つ本を一冊書きたい」というのが出発点にありました。読者が自分のことを考えるきっかけになるような本を書きたいと思っていたんです。“大船”が主だった時代は、心理学者の河合隼雄がそういう役割をしていたんですけれど、当時とは時代もだいぶ変わりました。
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