第二章では「馬とジョッキー」という補助線を登場させましたが、何が馬(心の衝動や欲求に突き動かされる部分)で何がジョッキー(現実を把握して心のかじ取りを担っている部分)なのかはそのときどきで違います。
結局、カウンセリングというのは自分が考えたり、整理したりするために人に話をするものです。もちろん、クライエントに「何をするべきです」と告げるときもあるのですが、究極的には「補助線」を提供する仕事なんだと思います。
——心理学で「補助線」という言い方をするんですか?
東畑:あまりしないのですが、だからと言ってオリジナルな言葉でもないような気がします。心理士は何となくみんな思っているんじゃないかな?心を考えるって、そういうことだと思うんですよね。「間違っているかもしれないけど、その線で考えてみる」というか……。
今の時代だからこそ求められている「ナイショの関係」
——今回の本では、七つの「補助線」が提示されています。
東畑:一番書きたかったのは、「シェアとナイショ」(4章、5章)の部分なんです。
——どういうことですか?
東畑:ここ10年ぐらい、SNSで「シェアしよう」とか「シェアリングエコノミー」
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