とか「シェアハウス」とか、「シェア」という言葉が浸透して良いところがたくさん語られてきました。シェアは確かに良いのだけれど、一方でいろんなリスクも孕(はら)んでいます。「シェア」という言葉の軽やかさに対して、もう一つのシリアスな問題として人間関係にみんな苦しんでいる。でも、みんな何となく「シェア」のロジックで語っちゃうので、一対一の親密な「ナイショ」の関係の良さみたいなことが語られにくい。それはやっぱり、バランスを欠くのではないかと感じていました。
——確かに「ナイショの関係」と言うと、昭和というかクローズドなイメージがあってちょっと重いなと思ってしまうかも……。
東畑:そうなんです。「ナイショの関係」と言うと、みんな昭和的なナイショの関係をイメージするんですよね。「家父長制の中で抑圧される、自由を奪われる」というようなイメージ。でもむしろ、みんなが“小舟”で生きるようになった今の時代は、ナイショの関係で人と人が深くつながっていくんです。本の中では、「二人がそれぞれの小舟を降りて、一つの小舟に乗り込んだかのよう」という表現を使いましたけど、昭和のときとは違ったナイショの関係が、今必要とされていると思いました。
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