がある。家族という共同体は、愛という名の王道から入らなくても、構築できるのだと示唆している。
産まなくても母になれる
綾瀬は基本、仕事人間だ。趣味なし・男なし・休みなしで、ただひたすら仕事だけにまい進してきた。「恋したい」「結婚したい」「子供がほしい」と思ったこともない。今までの「仕事だけの人生」を後悔もしていないが、ふとした瞬間に寂しさを覚えることもあった。その時、偶然にも「母になる」チャンスに恵まれた。人生の岐路、一大決心である。
生活を変えるには勇気と覚悟が必要だ。それでも綾瀬は飛び込んだ。そして竹野内のオファーを引き受けることで小学生の娘ができた。飛び級の出来事である。さらに、ピンピンころりで死ぬことを想定していた竹野内が病気と闘う決意をし、「治っても一緒にいてくれますか?」と愛の告白もしてくれた。娘だけでなく、想定外だった夫までもがついてきたのだ。ドラマの中で綾瀬は動揺しつつも、「奇跡の受注」と呼んでいた。とてもいい表現だったと思う。
愛を学ぶこともできた。産まなくても母になれた。これは女性にとって、可能性と選択肢を広げるきっかけになる。物事の順番を気にして、踏み込めずにその場でグルグルしている人は、綾瀬の飛び級人生に胸がすく思いを抱いたに違いない。
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