恋愛情報『【小説】時間の奴隷/恋愛部長』

2019年6月18日 22:00

【小説】時間の奴隷/恋愛部長

たぶん、舞が先月こう言ったせいだ。「既読になったということは返事が来るのかと期待してしまう」と。メッセージに気づいたらすぐ返事がほしい、という意味だったのだが、一真は違う風に取ったらしい。つまり、「返事をする気がないなら、そもそも読むな」と。

以来、既読にすらならなくなった。これで、自分から一真への一筋の回路さえ閉ざされたような気持ちだ。舞は、暗い気持ちで、メッセージアプリのアイコンをにらむ。

付き合い始めた学生時代は、どちらかと言うと一真のほうが舞といっしょに居たがった。
舞は、自分の時間がほしかったので、いつでも居場所を確かめて、いっしょに居ようとする一真が少しうっとおしく思うこともあった。

「少し距離を置こうよ」なんて、距離の意味もわからずに一真に告げて、涙目にさせてしまったこともある。あの頃が、まるで何十年も昔のことのようだ。

2人そろって大学を卒業して社会に出て、お互いにやりたかった仕事に就いた。舞は、それほど忙しくはない会社で広報の仕事に就き、一真は激務で知られる金融コンサルティングの仕事に就いた。

学生時代は、たわいもない議題で朝まで討論したりして、時には言い負かしたりもしていた一真が、たった数年のうちに、自分よりもずっと先を走っている気がする。

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