夏花は、指をからめながら、少しじらすように言う。
「え・・・・・・、約束なんてしたっけ?」
そして、男の顔が一瞬こわばる前に、すかさずにっこり微笑んだ。
「な~んてね。・・・・・・うれしい」
祐二は、目を潤ませて、夏花のことを見つめた。ぐっと腰を抱き寄せられ、軽くキスされた。
「夏花ちゃん、好きだよ」「私も」
ぎゅっと祐二の背中を抱いて熱くささやきながら、夏花は、心の中に浮かんだ影に向かって、そっと嘲笑を送った。
(彼女じゃなくなってもいいから会いたい、なんて。未練がましくてみっともない女!)
■3か月目の憂鬱
付き合うまでが、一番燃える。
つまり、気に入った男に近づき、誘惑し、落とすまで。ドキドキするし、好きな気持ちも最高潮に盛り上がる。
でも、付き合ってしまえば、なんてことはない。どんな男も同じようなもので、最初の1か月を過ぎたころには、もう退屈が襲ってくる。
大体、夏花が相手にする男は、仕事が忙しいエリート男性ばかりだから、恋愛にそれほど時間を割けるわけでもなく。たまにしかないデートでは、いつも金がかかっていて趣向も凝らされているけれど、デート自体が頻繁にあるわけではない。